11月の誕生石と言えば、トパーズとシトリン。
この2つの宝石、見た目がそっくりなので、中世ヨーロッパでは、シトリンは黄色いトパーズだと勘違いされていました。
今でもシトリンのことを「シトリントパーズ」と呼ぶことがあるのは、この名残。
しかし、そっくりなのは見た目だけで、構造や性質はまったく似ていないんですけどね。
今回はそんな11月の誕生石のお話。
見た目は似ているのに全く異なる宝石言葉
3か国の同盟を結んだ友情の指輪
シトリンと間違えられていたトパーズ。
シトリンのような黄色いものはもちろん、様々なカラーバリエーションがある宝石の1つです。
特に中世ヨーロッパにおいて、その人気は爆発的でした。
シトリンがトパーズに間違えられていたのもこの時です。
トパーズが人気だったのは中世ヨーロッパだけではありません。
古代ローマでは、男性たちの間でトパーズの指輪が好んで着けられました。
指輪の数が多ければ多いほど、より紳士であると認められていたので、全ての指にあふれるほど着けていた人もいたとか。
そんなトパーズにつけられた宝石言葉は「誠実」と「友情」。
「誠実」は、古代ローマ時代に紳士の象徴として好まれていたところからつけられたのであろう。
「友情」には、3人の女性によって結ばれた同盟「3枚のペチコート作戦」が深く関わっています。
時は18世紀ヨーロッパ。
プロイセンがすさまじい勢いで領土を拡大していました。
これを脅威に感じたオーストリアの女帝、マリア・テレジアは、プロイセンの包囲網を敷こうと画策します。
その時に目をつけたのが、200年以上も対立している宿敵フランス。
フランスを影で動かしていたフランス国王15世の寵姫、ポンパドゥール夫人を味方につけたマリア・テレジアは、女帝エカテリーナ率いるロシアも味方につけ、「3枚のペチコート作戦」を締結します。
実はこの同盟を結ぶにあたって活躍したのが「ドルージバの指輪」と名付けられたトパーズの指輪だったのです。
ドルージバとは、ロシア語で友情。
トパーズの「友情」という宝石言葉は、このドルージバの指輪にちなんでつけられたのです。
黄金色だからこその宝石言葉
中世ヨーロッパでは、トパーズに間違われてしまっていたシトリンですが、その歴史は意外と古く、紀元前ヘレニズム時代のギリシャでは、すでにシトリンがアクセサリーとして使われていたことがわかっています。
また古代ローマでは、シトリンに解毒作用や病気を回復する力があると考え、インタリオという掘り細工を施して、お守りにしていました。
そんなシトリンの宝石言葉は、治癒にまつわるものではないかと思いますが、そうじゃないんです。
シトリンの宝石言葉は「富」と「成功」。
シトリンのハチミツのような黄金色から、財産を連想させるこれらの宝石言葉がついているのです。
まとめ
中世ヨーロッパでは、混同されてしまっていたトパーズとシトリン。
しかし、見た目は似ていても、その歴史やカラーバリエーションはかなり違っています。
そして宝石言葉も、方向性が全然違っていましたね。
トパーズは人工的に色を調整しているものもあって、カラーバリエーションが豊富な宝石ですが、その分、光や温度の変化に弱い宝石。
だからこそ、人が手を加えやすいのですが、保管する際には必ず、光や熱が遮断できるケースに入れて保存してください。
そうしないと、久しぶりに着けようと思ったら色が褪せてしまっていたなんてことになりかねませんからね。